誰かに何かを作ってもらう時(制作依頼)の心得
私もいくつか共作やったり制作依頼とかして(されて)きたので、マニュアルじゃないけど初心者向けの心構え的なものをまとめておこうかと思います。随時更新。
はじめに
共作するにも単なる制作依頼にしろ、とりあえず誰かに「これお願いします」または「これやってくれませんか?」という会話からだと思うので、基本的に依頼する時の心得を書きます。
この人と一緒に作りたいな、この人に曲/絵/動画等を作ってもらいたいな、と思ったら、まずは連絡…の前にちょっと待った、調べておくべきことがあります。
- その人は制作依頼を受け付けていますか?
- リアルの都合等で制作依頼は受け付けていない人も沢山います。プロフィールなどに「お仕事は受け付けておりません」等の文言がある場合は、お願いするのは控えましょう。
- その人は、プロではありませんか?
- 最近はプロの方が趣味・遊びで作った作品を無料で配信している事も多いです。
プロの方にお願いするとなると、まず無償ではやっていただけませんし、有償となると素人が予想しているよりもずっと高い価格かもしれませんので、注意しましょう。
また、プロじゃなくて同人・アマチュアの人でも無償制作は受け付けていない方もいらっしゃいます。できれば事前に調べておきましょう。
また、どうしてもこの人にやってもらいたい、といったこだわりが無ければ、ピアプロのコラボを作ったり、他の方のコラボに入ったりして制作仲間を見付けるのも手です。
他の人と動画の絵がかぶっても良い、くらいの気持ちであれば、ピアプロ・ニコニコモンズ・ピクシブ等で素材としての利用が許可されている絵を使うのも良いでしょう。制作依頼というのは自分が出来ない部分をカバーする為にやってもらう事ですが、何も全てにおいて一から新しく制作する必要はありません。
お願いしてみる
注意する事
それでも制作依頼の方が良い、と思うならお願いしてみましょう。ちゃんと上記の事は確認しましたね?
有償制作となってしまう場合は、自分の中で予算をきっちり決めておきましょう。ぼったくりは滅多にないと思いますが、予算を大幅にオーバーする場合は諦めるといった事も必要です。ある程度相場を調べてから依頼しましょう。
なお、私が友人に絵を描いてもらおうとお願いした時は、「(有償しか受けてないけど、友達というよしみで)無償で書く事も出来るけど、その場合はクオリティが下がるよ」との事でした。何かを作る為には、それ相応の時間がかかります。無償で作ってもらう場合も、有償で作ってもらう場合も、時間を労力を割いてやってもらっているという気持ちを忘れずに。
相場はあんまり詳しくないので書きませんが、同人レベルでも絵・曲ともに一つ数千円~数万円くらいかかります。これは使用許諾契約(制作する人が「こういう目的に使っていいですよ」という許可を出すだけ)の場合の価格で、買い取りの場合はもっとします。詳しくはこおろぎさんの以下の記事等をお読みください。
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お願いする時の注意点ですが、友達とか既に交流がある人なら別に良いですが、そうではない人にお願いする場合は丁寧な文章・態度で。とりあえず私はビジネスメール(風の文章)もまともに書けない人からの依頼は無視します。
伝える事
「こういう歌詞作ったんで、曲書いてください!」的なメッセージを受け取った事がありますが、正直これだけだと制作する側としては困ります。
お願いする時は、以下の事柄を具体的に伝えると良いでしょう。
- 有償でお願いする場合は、予算
- 納期(いつまでに作ってほしい)
- 作ってほしいもの(1024x768pxの絵を何枚、とか)
- 作品の指定(○○の絵を描いてほしい、明るい曲調で書いてほしい、とか)
- 作ってもらった作品をどのように使うかの予定
マエダショータさんのツイートや記事がわかりやすいので参考までに。
自分で考えたことを、人に作ってもらう仕事をしてきたからわかるのだが、頼む時は「こういうものを作ってほしい」「その理由は〇〇だからです」と、目的と背景を説明して、やり方はその人に任せるのがよい。能力のある人なら、僕の予測など上回るものを作ってみせてくれる。能力の裏には想像力がある。
— マエダショータ (@monthly_shota) 2016年4月27日
「ウトゥクシクモナイシ、カワイクモナイクセニ」 - 月刊ショータ
サラリーマンの仕事をドライヴするものは「怒られたくない」という動機であると喝破したのは、元博報堂のネットニュース編集者、中川淳一郎さんである。 広告業界のしょーもないエピソードが著書である『夢、死ね』(星海社新書 二〇一四年)に書かれていて、業界にいる人間は身につまされすぎて笑えないけど、働く人の全てが大いに頷ける良書である。 僕はある晩、友人の小西くん(仮名)と呑んでいた。お互いにだいぶ酩酊して
有償制作の場合は予算内でできる事の相談をしてからの方が良いかもしれません。
作品の指定については、私は具体的であればそれに合わせるし、そうでなければ勝手に作るし、どっちでも良いかも。人によってはあれこれ指定されない方がやりやすい人もいると思います。でも、どうしても自分が外したくないポイントがあれば伝えておくべき。
特に、作ってほしい物のリクエストというよりは、既に作ってある元となる作品をどういう気持ち・イメージ・世界観で作ったかを教えてもらえると助かります。共作の場合は、まだ作ってなくても「こういうのを作りたい」と伝えること。
残りの二つは重要です。まず、納期。これは、余裕をもって制作スケジュールを組みましょう(季節ものは特に。私も人の事は言えないが…)。自分が一週間で歌詞を書けるからって、他の人が同じ時間で絵や曲を書けるとは思わないように。
納期に間に合わないと言われて、諦めて他の人を探すか、「いいやそれでも」と最初に選んだ人に作ってもらうかはあなた次第。でも、無理を言ってはいけません。特に理由が無いなら納期を延ばすのが良いでしょう。
そして「作ってもらった作品をどのように使うかの予定」、これは難しい言葉で言うと著作隣接権、著作物をやり取りする場合の肝になる所なのでしっかり取り決めましょう。
例えば、ニコ動に上げる曲の為に絵を描いてもらったとします。折角なのでYouTubeにもアップしたとします。そしたら絵を描いてくれた人が「何でつべにもアップしてるの!?」と怒るかもしれません。
何故、絵師さんは怒るのでしょうか。それは、絵師さんとしては「ニコ動用の」絵を描いたつもりだったからです。他のサイトにアップする事は許可されていなかったのです。
法律上、権利者は許可なく使用された著作物をサイト上から削除する権利がありますし、場合によっては追加料金などを請求される事もありますので、作ってもらったものをどこで使うかについてはよく考え、話し合っておきましょう。トリミングなどの加工もダメな場合があるので要確認。
勿論あとから「あ、ここにも使いたいな」と思っても事前に制作者に相談すれば良いだけなんですけどね。
制作中のやり取り
基本的には最初に伝えた事柄をもう少し詳しく細かく調整していく事になります。でも一番調整する事になるのは先程適当にごまかした「作品の指定」の部分だと思います。
恐らく依頼された側も、「はい、できたよ」といきなり完成品を依頼主に送り付けるのではなく、制作途中で「こんな感じですか」と何回か下書きとかを見せて(聴かせて)くれると思います。この時、気に入らなければ勿論「此処をこうしてください」と言ってOK。
ですが、特に有償の場合、リテイク(作り直し)は一回まで、などといった条件が契約時になされる事があります。かといって、不満を口にせず完成間際になって「やっぱり此処直して」というのが一番労力の無駄遣いなので、イメージと違ったらできるだけ早く伝えましょう。
ただ、一つ心にとどめておきたい事が、制作者は依頼主ではない、という事です。どれだけ言葉でイメージを伝えても、あなたの思っている通りの受け止め方を依頼された側はしませんし、そもそもどんなに上手い人だって、人間の技術には限界があります。自分が思っている通りの作品を作ってもらえる、とは思わないようにしましょう。
作ってもらったら
作ってもらった作品は、ちゃんと使用しましょう。作ってもらったものを使わないというのは、有償の場合はお金を払っているので文句は言われないかもしれませんが、無償の場合はタダ働きさせた上に作品を無駄にするというとても失礼な事です。何らかの事情でどうしても使う機会が無くなってしまった、という場合は、せめて事情を説明して謝罪しましょう。
また、クレジット表記についても作品を公開する前に話し合っておきましょう。無償制作の場合は、このクレジット表記が製作費の支払いの代わりとなっている事も多いです。以下の事を訊いておけば一先ずは安心でしょうか。
- 表記する作者名
- サイトURL・ニコ動のマイリスなど(どれをどこに併記するかも聞いておく)
人によっては「クレジット表記は要らないよ」とか「寧ろ表記しないでくれ」という人もいます。後者はともかく、「どっちでもいいよ」的スタンスの場合は一応表記しておいた方が私は良いと思います。
トラブルが起こったら
制作依頼を断られたら
断られても、めげない。再度お願いして熱意を伝えるもよし、違う人を探すもよし。但し、安く買い叩こうと思ってはダメ。
依頼した人がドロン
制作依頼を積極的に受けている人や有償で制作している人はそんな事しないと思いますが、共作などでは担当者が居なくなってしまう事もネットの世界ではよくあります。
出来る限り連絡を取ってみて、返答が無ければ事前通告した上で違う人を探しましょう。
という事で、初心者が読むには長くなってしまいましたが、参考になるならしてください。