歌詞の書き方(発展編)
前回はとりあえず歌詞っぽい何かを作る所まで説明しました。
今回は、後で曲を付ける事を想定した詞先制作のコツみたいなものをメインに書きます。
全て独学&自己流なので、他に良い方法があればそちらをどうぞ。
ストーリー性を付ける
メッセージやイメージからではなく、ストーリーを歌詞にするというのをやってみましょう。まずはプロットを作ります。
普通は起承転結、と言われますが、歌詞の場合は文字数が少なく、小説の様に具体的な描写が出来るわけではないので、「起(一番)・転(二番)・結(最後)」という構成でも良いと思います。
あとやはりアイデアを詰め込みすぎない事。
以下の事に留意してストーリーを考えると言葉にしやすいと思います。
- 主人公はどういう人か
- 立場・性格・背景・口調・考え方など
- 最終的に辿り着きたい状況、伝えたいメッセージ
- 辛い事があっても良い事もあるよ、とか、勇気出して告白したら付き合えるかもよ、とか
基本的にはイメージから歌詞を作る場合と大差無いです。
ストーリー性を大事にするなら「転」の存在が重要ですかね。
曲の構成から考える
これまでは「とにかく欲しい長さまで自分の決めたテーマで想像を広げる」という方法で作る方法を説明しましたが、ストーリー性を持たせる場合は楽曲の構成が重要になってきます。
詞先制作で後からメロディーを考える場合は、歌詞を作る段階である程度完成した楽曲の長さが予測出来ていないといけません。
曲を作る段階で調整出来ますが、あまり長過ぎるとどうしようもないので。
まず、一般的な歌唱曲の長さは二~六分くらいです。
もちろん、あなたの作品なのでもっと短かったり、長かったりしても構わないのですが、聴く側にとっては六分が一つの区切りになるかと思います。
曲調や演出にもよりますが、それ以上長いと途中で飽きられる可能性があります。
という事で、まずは曲の構成を考えます。
テンポの良いポップスに仕上げると仮定すると、一般的には、
というのが一番長い構成になると思います。
曲によっては最初のAメロがサビだったり、他の所が入れ替わっていたり無かったりします。Bメロ、Cメロが無くAメロとサビだけの曲もありますし、場合によっては3番もあるかも。
ただこれは限界まで長くした構成なので、基本的にはこれよりももっと簡素な構成で伝えたい事を伝える歌詞にしましょう。
大切な事は、最初に構成を決めて、それに収まるように歌詞を書く事。
書いている内に多少変更が入る事はあるでしょうが、基本的には構成を軸にします。
これは曲先制作の場合も求められる事です。入らないアイデアは捨てる事も大事。
また、メロディーの種類(Aメロ、Bメロ等)を増やし過ぎないようにしましょう。
つまり、音数が同じ聯を二~五種類くらい作って、それらを連ねる感じにしましょう。
曲を自分で付けるならいざ知らず、誰かに書いてもらう時は出来るだけ構成がシンプルな方が負担が少ないです。
また、メロディーの種類が多く反復が少ないと耳に残り辛い(覚えにくい=聴いてもらっても記憶に残らない)上に、まとまりがなく感じられます。
慣れない内は心持ち短めに作ると良いでしょう。
商業音楽の歌詞を見ていると気付くと思いますが、長い曲であっても、歌詞の言葉の数自体は案外少ないものです。
歌唱合成で音源を作る場合は、かなり早口でも問題無いのですが、そういうのは「敢えて」やるものであって、「やったらこうなっちゃった」という流れで作るものではありません。
修辞にこだわれ!
さて、「最近は内容解りやすい方が受けはいいかも」と言いましたが、寧ろ解らないからこそ人気がある作品もありますし、自分がやりたいならどんどん隠喩や修辞を使って良いと思います。
作りたいから作る。伝える必要など無い。そういう気持ちで作られた作品はそれはそれで良い味が出ます。
(但し商業作詞家を目指しているならそういう気持ちは捨ててください。)
さて、此処まで読んで実践出来た方は、既に散文調の歌詞ならスラスラ書けると思いますので、これを元に歌詞をレトリックまみれにして解りづらくしましょう。
但し、解りづらくする事が真の目的ではありません。一回目に聴いた時は「これどういう意味だろう?」と考えさせ、二回目以降に「こういう事かな?」と想像で真意を予想してもらうのが目的です。
此処で注意したいのが、修辞にこだわりすぎるあまり本来の歌詞の意味を見失ってしまったり、そもそも歌詞を書く目的が修辞にこだわる事になってしまったりしないようにする事。
そもそも答えが無い問題について「考えろ」と言われたら、時間の無駄だと思いますよね?
いくら比喩やレトリックに隠れていても、ちゃんと「答え」のある歌詞を書きたいものです。
基本的には音数との兼ね合いになりますが、寧ろ隠喩を使う事で表現の幅が広がり、音数を揃えやすくなる利点もあります。
綺麗な修辞で自分の言いたい事がかっちり表現できると、芸術性も高いし自分も嬉しいです。
あとはひたすら語彙力を鍛えましょう。
口調・文体を揃える
よく文章を書く時に、文体を揃えろと言われますよね。私は歌詞でも、特に理由が無い限り揃える方が良いと思います。
特に一人称や二人称が一曲の中で変わっていないか確認。
音数の問題でやむなく変える事もありますが、ストーリーを持つものだと「あれ? 主人公二人居る?」と捉えられかねないので注意。
曲中の登場人物のキャラクターがぶれないように気を付けましょう。
外国語のフレーズを入れる
歌詞に英語が含まれてるJ-POPは多いです。
歌唱合成の場合は日本語ライブラリだと調声が難しいですが、やってみるのも良いでしょう。
ただこの件に関しては、リアルな発音・自然なフレーズを目指すなら「外国語を勉強しよう」としか言えません。
まず発音。英語は無声音が多く、音数の数え方が日本語とは違います。
また、文法や単語は正しくても、日本の学校で習うガチガチの英語がフランクな口調の日本語歌詞の中に突然現れたら、なんだか変な感じがします。
日本語でだって詩や歌詞を書くのは難しいのに、外国語でとなるとかなりハードルが高くなります。
洋楽などを参考に、まずは単語や短いフレーズから頑張りましょう。
発展編は此処まで。次回は実践編という事で私の既存曲の制作過程を解説します。