Choose your language. / ja / en / zh
このサイトでは Cookie を使用して、ユーザーに合わせたコンテンツや広告の表示、翻訳、広告の表示回数やクリック数の測定を行っています。 詳細

ボカロPを職業にしたい君達にビジネスとは何か教える

 今年は男女問わず、中高生が憧れる職業の上位に「YouTuberなどの動画投稿者」がランクインしました。この中にはボカロPも含まれていると思われます。

 テレビを見ていても動画の広告収入でがっぽがっぽ稼いでいる人ばかり取り沙汰されるので、夢を見るなというのは子供には無茶な話かもしれません。
 だって皆のお父さんお母さんみたいにサラリーマンやパートでキラキラしてたりちやほやされたりしてる人、あんまり居ないもんね。

 それでも中高生が「ボカロPとして曲を作って食べていきたい」「Youtuberとして広告収入で暮らしていきたい」と言えば、反対する親御さんが大半でしょう。
 反対される理由としては「不安定だから」「才能が無いから」「初期費用がかかるから」などがあると思います。大人は色々言うけど「正直やってみなきゃわからないじゃん?」とか思うよねわかる。

 だけど、それはきっと親御さん達が正しい。なんだこの記事も説教なのか、と思わずに、どうして親御さん達が反対するのか、応援してもらうためには何が必要なのか(現時点で何が足りていないのか)を、読んで理解してほしいです。
 解る人向けに書くと、「コンテンツマーケティング」のお話。

ボカロPはどうやってお金を稼いでいるの?

 「ビジネスなんて大げさな」と思った人は、ボカロPを職業にする覚悟が足りていません。(私の様に)他に向いている本職を見付けて、ボカロPの活動は趣味として行うことをおすすめします。
 ビジネスの世界では、(あなたがそうでなくても)周りの人達は必死です。日々頑張っている人々の中で、どうのし上がっていくか、或いは生き延びていくか。それを真面目に考える気すらないなら、そもそも立ち入らない方が良い世界です。

 …ということを世の親御さん達は色々な言葉で言ってくるのですが、正直言われるだけだとよくわかりませんよね。具体的に説明していきます。

職業=お金を稼ぐ=お金を払ってもらう

 まずはこれを理解しましょう。どの職業も、お給料をもらうためには、それ相応の「価値」を他の誰かに提供しているのです。
 事務員であれば、会社の書類を整理したり手続きを誰かの代わりにやってあげたりして、お金をもらっています。そのお金は会社の他の部署の人が商品を売ったりして得たもので、此方はその商品やサービスを受け取るお客さんからお金をもらっています。

 では、動画投稿者について考えてみましょう。一般にYoutuber、としてしまうと話が広くなりすぎるので、ここではボカロPに限って考えます。
 ボカロPとしてお金を稼ぐとすれば、以下のような活動が考えられます。

  1. 作った曲を売る(CDや有料配信、有料制作など)
  2. 動画の広告収入
  3. インタビューなどの謝礼
  4. 本やブログの執筆
  5. etc.

 1番目の曲を売る、というのが直接的ですが、実はここまでもっていくのはかなり大変です。お金出してまでボカロ曲を聴きたい人、どのくらい居ますか? つまりそういう事。
 同様に3番目以下の、直接楽曲・動画配信に関わっていない部分で稼げるようになるのも、そもそもの音楽的な実力が認められてからになります。
 駆け出しの頃は2番目の広告収入が主となります。

広告で儲ける仕組み

 動画を再生する時に、勝手に表示される広告で稼ぐ…これは一見すると、「お金を稼ぐ=お金を払ってもらう」とは異なる仕組みに見えますが、全く同じです。

 この場合は、動画配信者が「広告枠」という商品を売りだし、それを広告を出したい会社が買ってお金を支払っています
 実際には途中に広告会社や動画配信サイトなどが挟まっていて、配信システムの開発費や手数料を引いた額が動画投稿者に支払われます。広告会社によって支払い率などは異なりますが、ざっくり

  • 1クリック30円
  • 1インプレッション(閲覧)0.1円
  • クリック率1%

だとすると、月30万円稼ぐには約75万回の動画再生が必要です。これが毎月無いと食べていけません。
 なお、これでも広告単価やクリック率は楽観的に見積もっている方です。

 ですが、1クリック当たりに支払われる値段は、「広告枠」の価値によって変動します。単純に言って、沢山の人が見てくれそうな動画なら価値は高くなり、誰も見ないような動画なら低くなります。
 つまり、広告収入に頼るにしろ、音楽を売って食べるにしろ、結局のところ必要なのは「良い作品を作る」ことなのです。

 現段階でそれを理解していて、十分な実力があるのなら、誰も反対しないでしょう。
 「これから頑張る」と言っても認めてもらえなかった人は、普段の自分の態度を振り返ってみてください。
 電子辞書や電卓があれば、ある程度は英語や数学の試験で良い点数を取れるでしょうが、限度がある事は想像できるでしょう(例えば図形問題などは、定理を知っていないと計算しようがありません)。
 音楽やイラストの世界も同じで、良いソフトウェアがあれば良い作品を作れる訳ではありません。ましてやそれでお金を人からもらえるレベルにするには、普段学校でやっている勉強以上に多くの事を学ぶ必要があります。

お金を払ってくれる人はどんな人?

 良い作品を作る為にどうすれば良いか話す前に、直接作品を売る場合のビジネスについて話しておきます。

 まず、中高生のあなたは、月々のお小遣いをいくらもらって(或いはバイトで稼いで)いますか?
 そこからいくらくらいを、毎月音楽の為に費やしていますか?

 人にもよると思いますが、平均すると月1000円とか、多くても3000円とかでしょうか。
 この記事を見ている人は音楽に興味があると思うので、もっと高いという人も多いと思いますが、今の時代、世間一般の中高生は音楽にお金を払う方が少数派です。中には、CDは中古で買うといった学生も多いはず。

 ビジネスをする時は、「誰からお金をもらうのか」について考えておく必要があります。
 中高生と大学生、社会人では、趣味に費やせるお金の額が桁で違います。中高生にちやほやされても、全くお金にはならない事がある、というのは覚えておきましょう。

 では社会人ターゲットで曲を作れば良いのか? というと、そうとも限りません。社会人経験の無い人が想像で「会社に行くのが辛い」みたいな歌詞を書いても、どうしても薄っぺらさが出てしまいます。
 プロの作曲家は自身が経験した事の無い事でも、良い歌詞を書く事ができます。想像力もさることながら、インタビューや書籍・他の作曲家の作品からの取材を普段からしているからです。なんだか勉強に似ていますね。その通り、何でも極める為には継続的な努力が必要です。

 話が逸れましたが、現在、「ボカロPになりたい」でググると、必要やソフトや機材の紹介記事が上位に並びます。これは、ソフトや機材を売ったり紹介したりして稼いでいるからです。
 「ボカロPとしてお金を稼ぐ」の4番目の稼ぎ方の実例です。こういった記事を書く場合も、ターゲットをきちんと考えないと全く利益が上がりません。

コンテンツの価値を高める

 色々書いてきましたが、それでもDTMで音楽を作るのを仕事にしたい! という人は居ると思います。

 この話は、記事に書きたかった事の範疇を越えてしまうので、あまり深くは突っ込みませんが、一言でまとめるとすれば目先の手法やツールに飛びつかず、基本を学ぶこと
 ボカロPとして成功したいならまず音楽をやれ。口を酸っぱくして言い続けたい所ですね。特に音楽は良くも悪くも実力世界ですから。

 ニコ動を見ていると、全然理論に乗っていない、めちゃくちゃな旋律の曲で勝負している初心者が少なからず居ます。初心者はひとまず、音楽理論をやった方が良いです。なぜなら、それは「こうすれば人間は心地よく聞こえる」とまとめられたノウハウなのですから。
 攻めた曲調を試してみるのは、一通り普通の曲が作れるようになってからでも遅くはありません。ピカソだって、10代の頃は写実的な絵を描いていたんですよ。

 最近は小手先のツールの使い方やマーケティング手法を教える学校もいくつかあるようですが、そういうのは本等でも十分勉強できるので、学校に入ってまで勉強したいのであれば音楽系の専門学校や大学をお勧めします。
 私の友人にはプロの音楽家も居ますが、その人も音大卒です。音楽大学では音楽に関連する仕事に就く事を想定した教育が受けられるため、真面目に音楽を仕事にしたいと思う人は此処を目指します。
 中には全く関係無いキャリアを積んでから流星のごとく現れる人も居ますが、自分がそうである確率はほとんどない事を頭に入れておきましょう。そういう人も、両親が音楽家だったり、本当はそれなりのトレーニングを受けてきたけど隠していたりするものです。

泥臭い話

 これは私の推測ですが、「ボカロPになりたい」と考える人の中には、学校の勉強が嫌だとか、ボカロPは華のある仕事だとか思っている層がある程度居ると思います。なので最後に、さらに突っ込んだ現実の話だけしておこうかな。
 別に皆のやる気を削ぎたいわけではないのですが、知らずに足を突っ込んで人生を棒に振っては欲しくないので…。

華も無ければ旨い話も無い

 まず、学校の勉強が嫌、という人へ。フリーランス(多くのボカロPの様に、音楽レーベルや事務所に所属せずに活動すること)で活動する場合は、自分でお金を計算して、役所に行き、税金を納める必要があります
 これには帳簿の作り方にも厳格なルールがありますし、うっかりででも脱税することになれば多額の追徴金(税金+罰金)を請求されます
 多くのクリエイターがこの「確定申告」というもので躓きます。もちろん税理士さんを雇えば代行してくれますが、その税理士さんを雇うお金はどこから捻出するか、考えていますか?
 こういった社会の難しいルールや手続きを覚えたり作業したり、といったことは、普段の学校の勉強で訓練できるものです。将来の為に学校の授業をおろそかにしてはいけない、というのは、何も勉強した内容をそのまま使うことだけに活かされるわけではないんですよ。

 華やかな仕事だと思っている人へ。あなたは音楽を聴くとき、作詞家・作曲家の名前をチェックしていますか?
 最近はシンガーソングライターも多いですが、それでも歌手と作詞・作曲が異なる曲は多いです。編曲ならなおさらです。アーティスト(シンガー)に箔をつける為に、ゴーストライターをする事もあるそうです。
 ボカロPは作詞家・作曲家に当たります。ニコ動などの投稿サイト・SNS上でこそP名がセットで覚えられていますが、有名になってTV等で流れ始めるとあっという間にその名前は置き去りにされてしまいます。『千本桜』は有名ですが、ニコ動の文化を知らない人たちには、小林幸子の歌やCMソングという認識の人も多いんですよ。
 世間一般の人にとっての作詞家・作曲家の存在はその程度のものなのです。

ボカロPは金のかかる趣味だ

 仕事の話をしていたのに、急に趣味? と思ったかもしれませんが、実際、ほとんどすべてのボカロPが初期投資費(機材費)の回収すらできていないのではないかと思います。
 小遣い程度でも黒字を出せる人はかなり成功していると言えます。そういった人達も、多くはしっかりとした本業を他に持っており、中には本業がプロのミュージシャン、という人も。ニコ動で脚光を浴びてメジャーデビュー、そして売れっ子へ…という人は、それこそ片手で数えられるくらいしかいないのです。

 そろそろ文章ばっかりで疲れてきたと思うので、必要な機材とその価格のみ一覧で。

ボーカロイド
エディタ+ライブラリ1つで最低でも2万円程度から。
DAW
無料のものもあるが使い勝手が悪いことが多々。プロダクト(製品)を買うとなると最低でも2万円程度から。
ヘッドフォン
ものによりけりだが、制作用には1万円程度以上のものがほしいところ。
オーディオIF
ヘッドフォンやマイク、エレキギター、物理シンセなどを接続するために必要。安くても1万円程度以上。
音源
演奏・録音できない場合は各種シンセ等に頼る必要あり。シンセを使って作った曲を売るには、有料でロイヤリティフリーのシンセが必要(無料でも無いことも無いが、質は劣る)。価格はものによりけりだが、一通り入ったものを1つ買うとしても2~3万はかかる。
楽器・マイク
演奏・録音できる場合には生音で曲のクオリティを上げられるため有用。ただし一部のギターなどを除いて、楽器はシンセとは1桁以上価格が違うのが普通。
合計
楽器を使わない場合でも最低10万円は必要。ボカロを複数買う場合は1ライブラリ当たり+1~2万円。

 この10万円を回収するには、どの程度の再生数が必要でしょうか? 記事の上の方で計算しましたよね。

動画の効力、忘れてない?

 残念ながら、動画投稿サイトにアップされている楽曲はその音楽だけで評価されているわけではありません
 勿論、ヒットするには音楽の出来の良し悪しも重要なポイントですが、それ以上に視覚的なインパクト、途中で飽きさせない工夫も忘れてはいけません。

 動画(静止背景画でも構いませんが)もすべて自分で作ってヒットさせる、というのは、何らかの経験が無ければ現実的ではないでしょう。
 何もかもこれから、という人は他の人に頼むことになります。

 その際、上述の報酬は制作に関わった人たちで山分けとなります。
 そもそも、自分に実力が無い状態では、より実力のあるコラボレーター(共同制作者)を募ることすら難しいです。その場合は、制作依頼費として事前にいくらかお金を渡すことになります。この辺も初期費用として計上する必要があります。