第14章:そのとき

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 ここでのぼくのやくめは、まっとうしました。

「ねえ」
「なあに?」
 審神者は努めていつも通り応えようとしたが、白々しい感じが滲み出てしまう。
「主、何を隠してるの?」
 部屋の隅で刀身に縋る様に座っていた清光は、視線を合わせない。
「…どうして何かを隠してると思うの?」
 流石にもう、隠し通す事は無理か。主はいつもの無邪気な声色を作る事が出来なかった。
「…ごめん、今剣との話、聴いちゃった…」
 怒る? と不安げに顔を上げた清光に微笑む。
「…もう良いわ。どうせ、今日にも皆に知れ渡るだろうから」

「骨兄が…」
「『死んだ』…!?」
 小夜は粟田口の兄弟達にその事実を伝えに行っていた。一部の者はわっと泣き出し、鳴狐にしがみついて泣く。
「おいおい、マジかよ」
 騒ぎを聞きつけた和泉守が面食らった様に部屋の中を覗く。他の刀剣達もぞろぞろと姿を現した。
「皆良い所に来たね。今剣によると、昨夜骨喰に取り憑いた歴史修正主義者の式神がまだ本丸内に居るらしいんだ」
「んなもん、どっから入って来たんだよ」
「『入り口』からだろうって。過去と繋がっているのは、あの時間を遡る装置だけだから」
 悲しむ粟田口達にかける言葉が見つからないまま、他の者達は本丸内を捜索する。問題が起こった本丸は、現世に報告しに行くまでは何人たりとも外に出てはいけない規則なので、出陣も遠征もお休みだ。
「まずは入り口を塞がないとね」
 小夜がそう言った所、山姥切国広が慌てた。
「兄弟が戻ってきていない」
 和泉守と共に捜索を開始しようとしていた堀川も思い出してすっ飛んでくる。
 小夜は二人の顔を見詰め、言いにくそうに口を開いた。
「山伏は帰って来ないよ。例え、あの装置が動いていてもね」
「…どういう事だ?」
「山伏は遠征に行ってたわけじゃないって事さ」

『おぬしだけが辛いと、思ってはいかんな』
 山伏はいつぞやに安定に言った言葉を心の中で復唱していた。
「まあ、主殿の為に尽くすのも、結構であるな」
 弟達に何も言わずに、いや、他の誰にも何も言わずに来てしまった。尤も、主は彼の口の固さを見込んでこの役目を山伏に託したのだが。
 ある時代の山奥を延々と歩き続けると、集落があるのが見えた。
 その近くを浮遊している、骨だけの蛇。
「安心なされよ主殿」
 その言葉は彼女には届かない事を知りつつ、山伏は自らを奮い立たせる為に口に出していた。
「拙僧、山伏国広は、主殿の期待を裏切りはすまい」
 短刀を銜えた蛇に気付かれないようそっと近付き、山伏はその首に己の太刀を振り下ろした。蛇が銜えていた刀は霧散したが、蛇はその大きさを小さくして逃げようとする。山伏は素早く刀を返すと、下から振り上げて式神を真っ二つにした。
「…美術品に戻る時が来たな」
 帽子を脱ぎ、木々の合間から覗く空を見上げるその目は、清々しかった。


『創呪擦罪 骨肉相噛』がアマプラで聴ける事ご存知でした?
私は知りませんでした。