第6章:その靴音を僕は学ぶ

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 君の目に映る世界は、どんな物も歪みなく真っ直ぐで、例えそれが誰かを傷つけるものであろうとも、君は素直に受け入れられるんだろう。
 そんな生き方が、僕は凄く羨ましかった。

* * *

「魔物を退治してくれって依頼は結構こなしてきたけど、生け捕ってくれって依頼は初めてだな。スツルム殿は?」
「あたしもだ」
 背の低い木々が生い茂る山の中を、僕は一人の少女を連れて歩いていた。僕は魔物を生け捕る為の罠を入れた袋を背負っている。
「もう少し行ったら設置しよう」
「罠を見失わない為の施策はあるのか?」
 スツルム殿の背は低く、低木地であろうと離れればその姿を見付ける事は難しいと思った。逆も然り。
「え……うーん……周りの木々の形を覚えておくとか?」
「阿呆か」
 スツルム殿は心底呆れた顔をする。
「どうせ戦ってるうちに折ったり斬ったりする」
「えぇ~じゃあどうすれば良いの~?」
 チッ、と舌打ちが聞こえた。怖い怖い。折角得られた一緒に仕事をする機会なのに、スツルム殿は始終この調子だ。
 スツルム殿は黙ってマントを脱ぎ、僕に差し出した。
「罠を設置する場所の木に引っかけろ。出来るだけ高い位置に、広げて」
「はいは~い」
 彼女の体温が移ってほんのりと暖かい布を受け取る。
「この辺にしようか」
「ああ」
 僕は荷物を置く。スツルム殿が罠を設置している間に、言われた通り近くに生えている木に布を被せた。
「此処に魔物を追い込む。逃げて来やすい様になっている方が良いな」
「じゃ、僕の出番だね」
 僕は魔物の巣があると言われている方角を向く。赤い方の宝珠[スフィア]を掲げ、魔法を繰り出した。一直線に一定の幅で、木々が燃えていく。ある程度燃やしたところで今度は青い宝珠を取り出し、水を放出した。
「誘導路の完成! っと」
「魔術師が居ると便利だな」
「でしょ~? コンビ組んでくれる気になった?」
「別に」
「つれないなー」
 口を尖らせた僕を、スツルム殿が怪訝な顔で見上げる。
「お前、なんか昨日までと印象違うな」
「え? そう?」
 それは良かった。「僕」は気配を消していてくれる方が良い。
 それにしても嬉しいなあ。まさかこんなに早く再会して、一緒に仕事ができるとは思わなかった。
 つい顔が緩んでいたのか、スツルム殿は益々機嫌が悪そうな顔になる。
「何だ、気色悪い」
「だって本当に一緒に仕事してくれるとは思わなくて!」
「その依頼内容じゃ、どう考えてもあたし一人では無理だからな」
「だよねえ~」
 はぁ、とスツルム殿は可愛らしい溜め息を吐いた。おかしいな、昨日は僕が笑ったら彼女も柔らかい表情を見せてくれたのに。
「……それで、作戦は? スツルム殿に案があるんだよね?」
「ん」
 実行前に二人で内容をすり合わせる。まず、僕が巣穴に魔法で炎をぶち込む。驚いて出てきた魔物達の数をある程度減らす。一部は罠のある方向に逃げて来る筈だから、あとは誘導して罠に引っかかってくれるのを待つ。残りの個体は、襲って来る分は始末する。
「全滅させない様に気を付けないとな」
「そうだね。じゃあ行こうか」
 巣穴まではまだ距離がある。僕達は武器を確認すると、慎重に歩を進めた。