エクシア

  • PG12
  • 5918字

 浜辺に彼等の姿を見つけて、心底安心した。
 しかし、此処では既に一波乱あった様だ。浜辺近くのホテルには観光客が避難してきていて、砂浜では激しい戦闘があったらしい。所々大きく抉れている。
「グラン!」
「スツルム!?」
 呼びかけると、向こうも気付いてくれた。
「ドランクも! 二人も来てたんですね」
「ああ。これは……」
「アタシ達、なんか操られて記憶失くしてたみたいでさぁ~。グランやルリアの事、攻撃しちゃったワケ」
 答えたのはあたしの背丈と同じくらいある弓を持った、エルーンの女だった。
「お前は……」
「完全無欠のメーテラよ。アナタ達がスツルムにドランク? 思ってたよりイケメンじゃ~ん」
 ね、今度アタシにも貸してよぉ、と囁くメーテラに、そんなんじゃないと溜息を吐く。ドランクはただ怪訝な表情を濃くした。
「あのさ、さっきからなんで僕の事ドランクって呼ぶの?」
「は……?」
 目を丸くしたグランに、先程起こった事を説明する。ついでに、こいつがドランクと名乗り始めたのはあたしと組み始めてからだという事も。
「なるほどね。アタシ達は黒い結晶一つ分だったから、忘れたのは団長さん達の事だけだったけど、二重に憑かれちゃうとその前の記憶まで朧げになってしまうのね」
 まとめたのはドラフの男……いや女か……? とにかく団員にはファスティバと呼ばれている人物だった。
「でも安心して。黒い結晶をやっつければ元通りよ、アタシ達みたいに」
「そうか……」
 ほっとしたのも束の間、今度はその場に居た全員が頭を悩ませ始めた。
「黒い結晶……見えない……ですよね……?」
「確かに、これまでは自然と見えるようになっていたから困らなかったが……」
 カタリナがドランクの周囲を一周して顎に手を当てる。ドランクは説明を受けて自分の状況を理解したのか、大人しくしていた。カタリナと同じく顎に手を当て、何か考えている。
「これまではどういう感じだったんだ?」
「えーと、私の事を帝国に引き渡せとか、反対に帝国と勘違いして、帝国に私は置いておけないとかって。カタリナに言われた時は本当にびっくりしちゃいました」
 あっけらかんと答えたのはルリアだ。
「ま、俺達みたいにしょーもない理由で暴走したのも居るけどな」
「ちょ、エルっち、わざわざ蒸し返すなって」
「でもよローアイン、話聴いた限り、ギュステ合流組は割と平和な理由じゃね? 戦闘は一番派手だったかもだけど」
「「たかし~」」
 騒がしいエルーン三人組の事はさておき、あたしはカタリナを見上げる。
「お前がルリアとの事を忘れたのか……よっぽどだな……」
「ドランクが貴殿の事を忘れているのもよっぽどだろう。しかし、ルリアを狙わないで居てくれるのはありがたい……んなっ!?」
 カタリナの大声に、やっと気付く。ルリアとドランクが居ない。妙に大人しいとは思っていたが、言ってる側から……。
「こんなに騙しやすいとは思わなかった。君達、本当に騎空士なの?」
 声がした方を振り向く。少し離れた防波堤の上に、ルリアの口を塞いで抱え込んだドランクが立っていた。
「帝国の機密の少女、か。然程興味がある訳じゃないけど、色々と使えそうだ。それじゃ、貰ってくよ」
「ま、待て!」
 カタリナが駆け出す。あたし達もそれを追う先で、見えた。黒い結晶……!
「しっかし、キャラまで変わってんじゃねえか? なんつうか、気取ってるというか、気障っぽいというか……」
 走りながらラカムが銃を取り出す。
「……あれが素だ」
「おい、ルリアには当てるなよ!」
「わーってるよ!」
 呟いた言葉は、カタリナの怒号と、それに呼応するラカムの声に搔き消えた。


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