第7章:ジータちゃんの小冒険

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  • 4744字

「居ない……」
「ですね……」
 住宅を迂回して裏路地に来た私達を出迎えてくれたのは、ごみ箱の上にふてぶてしく座っている野良猫だけだった。近寄ると何処かに行ってしまう。
「さっきの猫と見間違えたのかな?」
「かも」
 そう結論付けて帰ろうとした。この辺りは街灯も少ないので、杖の灯りを点けたままにする。
 そして照らされた地面に伸びていたのは、明らかに何かが這った跡。
「やっぱり居る~~~!!」
「追いましょう!」
 その跡は再び、人間が通れない狭い隙間へ入って行く。私達は迂回して向こう側に回り込んでは、それらしき痕跡を探す、という事を繰り返した。
「あれ!」
 グウィンが急に脇道を指差す。
「今影が!」
 人がやっとすれ違える程の狭い路地に、急いで駆け込む。途中で反対側からも人が入ってきた。
「あっ、すみません」
 私の後ろで、グウィンはその人とぶつかってしまったらしい。一足先に通りに出て周囲を照らすも、そこから先はツチノコの痕跡を見つける事は出来なかった。
 尚も諦めきれず、暫く周囲をうろうろしていると、グウィンが悲鳴を上げる。
「何処!?」
「あ、ごめん、ツチノコじゃない……」
 グウィンは鞄の中を見て、眉を下げていた。
「お土産、落としちゃったみたいで。多分さっきぶつかった時だと思うんですけど」
「あらら。取りに戻ろう。確か……」
 あれ? どっち?
「いや、良いです。また買えば良いし」
「良くないよ~。まだそんなに歩いてない筈だから、探そう」
 幸い、その小路には間もなく辿り着いた。封の開いた紙袋に入った本も無事に回収。
「流石に戻ろっか。ツチノコも見失っちゃったし」
「そうですね」
 グウィンの背後に山が見える。という事は、その反対に行けばOKのはず。
「どのくらい寄り道しちゃったんだろ。グウィン、時計持ってる?」
「はい。……げ、二時間も経ってる」
「あちゃー。皆に心配かけてるかも」
 何度目かの袋小路にぶつかり、辟易しながら道を戻る。港に向かって歩いてるのに全然近くなってる気がしない!
「くちゅん!」
「肌寒いね――」
「大丈夫?」
 くしゃみをしたグウィンに大丈夫かと訊こうとして、背後からの野太い声に身を凍らせた。
「家すぐそこなんだけど、良かったら暖まってく?」
 し、知らない人についてっちゃダメって、カ、カカカタリナが言ってたよね?
「あ、いえ、けっ――」
 結構です。そう言おうと振り向いて視界に飛び込んできたのは、くりっとした目の子供だった。
「まあそう言わずに。見ない顔だけど、君たち何処の子? 今日は強盗や痴漢が捕まったとかなんとかで警察も忙しそうにしてたし、家まで送ってあげるよ」
 声の主は、その子を抱いた父親と見られる男性だった。
「あ、いや、その――」
「っくちゅん!」
 グウィンのくしゃみは本格的らしい。
「……ここから港まで、歩いてどのくらいかかりますか?」
「二十分ぐらいだけど、道が入り組んでるからねえ。旅人さんかい?」
「騎空士です。一応」
「きくうし!?」
 突然大きな声を上げたのは、大人しく行く末を見守っていた少年だった。
「おねえちゃんたち、きくうしなの!?」
「そうだよー」
「きくうしだって! ねえねえ、おそらのおはなししてー」
「こら、迷惑だろう」
「いえ、構いませんよ」
 グウィンをこのまま港まで歩かせたら確実に風邪を引くし、第一迷っているから、この人に道案内を頼むのは確定事項。少しお邪魔させてもらって、暫くしたらお暇しよう。
 ……というつもりで寄り道先を増やしたところ、またもや時間を忘れてしまったのであった。


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