第7章:ジータちゃんの小冒険

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  • 4744字

「でねっ。結局その後行き先が解らなくなっちゃって……」
 私はベッドの端に座った体を捻り、寝転がっているラカムを見た。シャワーを浴びた後、いつもの様に今日の出来事を話しに来ただけなんだけど、ずっとこの調子、相槌すら打ってくれない。
「……心配かけたのはごめんなさい」
 何度目かの謝罪を繰り返す。
「怒ってるでしょ」
「別に。お前ももう大人だろ?」
「まだだよ」
 もうすぐだけど。
「自分が子供[ガキ]だって自覚があるなら、そういう風に振る舞え」
「だからごめんって」
「俺に謝られても。俺は何もしてねえしよ」
「じゃあなんで機嫌悪そうなの?」
「そりゃあ、お前が」
 ラカムは一旦言葉を切って呻く。言っても言わなくても、苦しみからは逃れられない事を知っているかのように。
「お前が……お前の意思でこの部屋に居るって事を自覚してねえからだ」
「流石にそれは解ってるよ。自分の足で歩いてきたんだから」
「そういう意味じゃねえよ」
 ラカムは天井を睨んだまま吐き捨てた。
「カタリナに言われただろ。無暗に男と二人になるなって」
 その時、私の隣に転がっているラカムの腕が妙に際立って見えた。だからいつもの反論を見失ってしまった。
 ラカムの部屋は操舵室に近くて機械室も近い。皆の寝室とは離れていて、此処での声は誰にも聞こえない。
 ラカムは男なんだ。私の事をそういう目でも見れるんだ。
 それに気付いた私は、部屋から飛び出していた。

「……ビビらせてどうすんだ……」
 そりゃあ、俺だって一言二言小言は言いたかった。けど、艇に戻って来たジータは既にすっかり萎縮していて、怒る気力も失せちまった。
 でも風呂に入ったらそれも忘れちまったのか、またいつもみてえに、のこのこと部屋に入ってきてベッドに上がり込んで。外で怖い目に遭わなかったのは幸いだが、流石に釘を刺しとかねえとな――と思ったが口下手でこのザマだ。
「あーやっちまったー」
 あれだと行動を慎むとかじゃなくて単に俺を怖がる事になるだろ!
 明日の朝どんな顔をすれば良いのか悩みながら寝返りを打つ。その背後で扉が開く音がした。そのまま近寄って来て、さっきと同じ位置に座る。
「「…………」」
 足音と、ベッドの凹み具合。ジータだって事は振り返らなくても判る。けど、どうして戻って来た?
「待っててくれてありがとう」
 ジータが言った。俺は顔だけ上げて、その横顔を見遣る。
「でも、もう待たなくて良いよ」
 そう言って振り返ったジータの腕を、俺は本能的に掴んでいた。


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