第1章:ドランクを落としたいジータちゃん

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  • 4257字

 その男とまともに話す機会を得た時、私は絶対に彼を落とすと決めた。
「スツルム殿はね」
「スツルム殿ってば」
「スツルム殿はさ~」
 旅に出てこの方、ここまで私に興味を持たない人間はこの男が初めてだった。グランサイファーの自室に戻って、思わずこう漏らしたのを覚えている。
「フッ……おもしれー男」
 別に彼の事が好きとかじゃない。私はこれまで、自分のやりたい事は努力で押し通してきたし、欲しい物だって同じ様に手に入れてきた。そして、彼の難攻不落さは、私の闘争心に火を点け、欲するには十分な価値があるように見えたというだけ。
 ドランク。あのいけ好かないエルーンの傭兵を、絶対振り向かせてやる。

 そして今回、とある島の港でドランクとスツルムに偶然再会した私は、行き先が同じ方向だという事で、二人をグランサイファーに乗せる事に成功した。
「タダで乗せてもらうなんて悪いよ~。ちょっとくらいならお礼はするよ?」
「向こうが良いって言ってるんだ。ありがたく世話になる」
「うんうん! お礼は、魔物とかが襲ってきたら倒してくれればオッケーだよ!」
 二人にそれぞれの部屋を宛がう。ドランクはそのまま部屋に籠ってしまったけど、スツルムは飲み物が欲しいと食堂の場所を聞いてきた。
「私も小腹空いちゃった。ローアインにお菓子作ってもらおっと。スツルムは甘い物好き?」
「嫌いじゃない」
 まずは情報収集。どうもドランクは(かなり一方的っぽいけど)スツルムの事が好きらしいし、ドランクの好みが判れば儲け物。それに、流石の私も相手が居る人にちょっかいをかける趣味は無いから、スツルムがドランクの恋人だったら、このゲームはやめておかないとね。
「ローアイン特製フルーツパフェ! 二名様分お持ちしやした~」
「うわあ~美味しそう!」
「ああ。いただく」
 細いスプーンでてっぺんのクリームを削り、小さな口に入れるスツルムは、ヒューマンの私から見れば子供の様で確かに可愛い。ロリコンなら私にもワンチャンあるのでは?
「スツルムって、どうしてドランクと一緒に組んでるの?」
「あいつの魔法は敵に回したくないからな」
 うう、色気の無い返事。そういうのじゃなくて。
「えーそれだけ? 他には無いの?」
「それ以外に何があるんだ?」
「そ、そう……。あ、じゃあ、最初に組んだきっかけが知りたいかも!」
「あいつがしつこく付き纏って来るのが鬱陶しかったから、仕方なくだ」
 なるほど……。ん? つまり、ドランクはコンビを組む前からスツルムの事が好きだったって事?
「でも、羨ましいなあ。それって結構前の事なんでしょ?」
「十年……もっとになるか」
「そんなきっかけでも、ここまで長く一緒にやって来れるって凄いと思う」
 ドランクの一目惚れで、口説いてそのまま十年も一緒にコンビやれてるんだったら、めちゃくちゃ幸せ者じゃない?
「お前はまだ若いからな。この先、この[ふね]に乗ってる奴等の中から、そういう仲間が出てくるだろう」
 スツルムはこう見えて優しい。ま、好きになっちゃうのも解らなくはないよね。
「ありがとう。でも、そんなに長く二人で居るって事は、やっぱり付き合ってるの?」
「これまでに何度も同じような事を訊かれたが、答えはノーだ」
 その反応に一安心。でも、やっぱり結構言われるんだ……。
「そっか。……スツルムはさ、ドランクに恋人が出来たらどうする? コンビ解散しよーとか言われたら」
 スツルムの手が一瞬止まった気がした。でも、またすぐにパフェを口に入れ、飲み込んでから答える。
「解散なんて、する訳ないだろ」


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