第13章:別離

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 鯰尾は部屋に備え付けられていた刀掛台に骨喰を飾ると、その前に座り込んだ。
 障子の向こう側に今剣の気配がする。鯰尾が変な気を起こさないように…起こしても周りに被害が出ない様に見張りに付けられたのだろう。
「骨喰、聴こえる?」
 だが、鯰尾だって馬鹿ではない。
 主が骨喰を助けようとしないもう一つの理由が、見えていた。
「どうやら今日らしいよ」
 返事をしない刀に静かに語り掛ける。
「俺はまだ、どうするか決めてないけど、骨喰は選びようがなくなったね」
 鯰尾の見ている前で、骨喰の刀身は徐々にその存在が消えていく。
「…また会おうね」
 形あるものはいつか壊れ、命あるものはいつか死ぬ。自分達に与えられた時間は有限だ。ただ、その長さは各々異なっているという事が、この仮初の世の理不尽である。
 いつか別れが来る事は解っていた。そのタイミングが他よりも早く来そうだという事も薄々感じていた。だけど、あまりにも早く、あまりにも突然だ。
 骨喰の姿は、とうとう跡形も無く消え去った。鯰尾は自分の膝に顔を埋める。この理不尽に対する怒りの矛先が見つからない。誰も責められない。
 一番、限られた時間にしがみついていたのは、主なのだから。


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