第2章:北区、アレックスの実家。からの南区、フェリックスの自宅。

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  • 1050字

「はい孫!」
 アレックスが両親に彼等の三人目の孫を見せる。従業員の女性達も幼児にメロメロだ。その間にヴィクトーは水着を選ばせてもらう。
「つか何でも良いけど」
(泳ぐつもり無いし)
 結局ルークリシャセレクトの物に決める。グレーのシンプルなデザインだ。誘ったのは俺だからとアレックスが費用を負担してくれた。
「さて次は兄貴の家に行くかな」
 馬車に乗って南区のフェリックスの自宅へ行くと、彼が騒ぐ双子を見ながら居間のソファーでだれていた。
「海ぃ?」
 アレックスの提案に、フェリックスはヴィクトーと似た様な反応をする。
「休みの日くらいゆっくりさせてくれ。ジュリアスとルイーズが行きたいなら連れてって良いから」
 フェリックスは開業医をやっている。今日は休診日だ。ブルーナは小学校教師だが、夏休みであっても部活やら会議やら、教師の仕事が休みになる訳ではなく家に居なかった。
 とにかく互いに仕事がハードな上、二人も五月蝿い子供が居る。いくら若いとは言え、休みの日にきっちり休んでおかないと体力が持たない。医者の不養生とはこの事である。
「でも万が一の事があったらさ…」
 ヴィクトーがアレックスの受け売りでフェリックスを連れて行こうと説得を試みた。何か訳がありそうだな、と思ったフェリックスは、深紅の瞳で彼を見据えると、はしゃぐ子供達とアレックスを置いて二人で廊下に出た。
「あんたが俺に同伴を求めるとか気色悪い」
 昔あれだけ監視を嫌がったのに、とヴィクトーの治療を行っていた時の事を思い出す。
「…俺泳げないんだよ!」
 ヴィクトーが顔を赤らめながら言った。小さい時から臨海学校やプールで訓練を重ねてきたウィリアムズ国民とは違い、ヴィクトーは山の中で育った。水に入ると言っても浅い川に魚を取りに浸かるくらいだ。水が怖い訳ではなかったが、経験の差からヴィクトーの泳ぎが下手なのは仕方が無い事である。しかし学校で随分それをからかわれたので、その内彼は水泳の授業自体を受けなくなり、下手くそなまま上達していないのだった。
「そういう事か」
 フェリックスはニヤニヤしたものの、何処かからブザー音が鳴り始めたので、真顔になって居間に叫んだ。
「急患らしい! ちょっと病院行って来るから、出掛けるなら戸締まりよろしく!」
 そして彼はヴィクトーの横を素通りして病院へ急いだ。ヴィクトーは居間の四人の子供達を見て頭を抱える。
(事故が起こらなきゃ良いけど…)
 頼れる大人は実質アレックスだけである。ヴィクトーは自分も含め誰も溺れない様に切に願った。

『創呪擦罪 骨肉相噛』がアマプラで聴ける事ご存知でした?
私は知りませんでした。