囀り

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「ねえスツルム殿、知ってる?」
 早朝、鳥が五月蝿いくらいに鳴いている山道を往く。隣を歩く男は、苦手な早起きをしたところだと言うのに、もういつもと同じ喧しさを発揮していた。鳥とどちらが騒がしいだろう、少なくとも話し方が癇に障るのは相棒の方だ。
「目的語を付けろ」
「痛って! 朝っぱらから刺さないでよ~」
 男は尻を大げさに擦りながら、続きを話す。
「何かの本で見かけたんだけど、鳥が朝囀るのはね、起きた時に伴侶が隣に居てくれた喜びを表現してるんだって」
「喜び?」
「小鳥の世界では、巣で休んでる間に蛇や魔物や、もっと大きな鳥に食べられちゃうなんて事も茶飯事だからねえ」
「へぇ」
 あたしは鳥の声が聴こえる樹の一つを見上げた。
「鳥も家族思いなんだな」
 言った途端、相棒が噴き出す。
「な、なんだ」
「いや~。スツルム殿って、純真で可愛いなあって」
「は?」
「人間同士でだって相手の気持ちなんて解らないのにさあ、人間が鳥の気持ちなんて解るわけないじゃない」
 言われてみれば確かにそうだ。だが、おちょくられたのは腹が立つ。
「ちょっ、痛い! 刺さないでってば、これから仕事だよ?」
「うるさい!」
 大声に驚いたのか、何羽か枝から飛び立った。あたしは気が済むまでドランクの尻を突く。
「あー痛かった」
 あたしが剣を仕舞うと、ほっとしたような、名残惜しそうな声を出す。
 人間同士でも相手の気持ちなんて。あたしは、このドランクという男の考えている事が、一番理解できなかった。