第2章:奇怪な見た目の彼

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  • 1407字

「あにきー中学どんなだった?」
 フェリックスは帰って来ると弟のアレックスにそう尋ねられた。夕飯の支度をしていた母親が、アレックスの頭を叩く。
「お兄ちゃんでしょー。乱暴な言葉使わないの」
 叱られて口を尖らせるアレックスを連れて、フェリックスは自分達の部屋がある三階へと階段を上った。
「フローラ達とは同じクラス?」
「いや、残念ながら」
「そっか…人数多いもんな」
 早く俺も中学に上がりたーい、と一人楽しそうなアレックスが自分の部屋に入るのを見届け、フェリックスはその隣の自分の部屋の扉を開けた。
 黒い家具が並ぶその部屋の出窓に腰掛けると、フェリックスは片膝を立ててその上に肘を突いた。
(どんなだった…か…)
 正直、思った通りというか、フェリックスにとって進学は予想していた通り期待ばかりに満ち溢れるものではなかった。

「はい、それでは自己紹介しましょうか」
 入学式の後のホームルームの終わり頃。若い女教師が白々しく明るい口調で言った。
「出席番号順に立って言ってねー」
 教室の前方に座っていた生徒が立ち上がり、名前と出身小学校、どんな部活に入っていたか、その他自己アピールをすると着席した。続いてその後ろに座る生徒が立つ。
 彼等の髪の毛は、皆黒かった。
 フェリックスの番が来ると、彼はプレッシャーに負けじと胸を張って立ち上がった。無論、この自己紹介が始まる前から、周囲の視線…特に小学校が違った生徒達や保護者の視線が痛かったけれども。
「フェリックス・テイラーです。えっと…北小学校から上がってきました。部活はやってませんでした。魔法と、あと園芸が好きです。よろしくお願いします」
 ホームルームも全て終わり、解散が言い渡されると、フェリックスは瞬く間にクラス中から質問攻めに遭った。
「ねえ、どうして真っ白なの?」
「病気? 移らないよね?」
「これ何? サングラス?」
「触らないで」
 フェリックスが言うとグラスケースを手に取っていた生徒が嫌そうな顔をしてそれを彼に返した。急に静まり返った同級生達に、フェリックスは小さな声で説明する。
「白いのは生まれつき…移ったりはしないから安心して。太陽や光に弱いんだ。目も良く見えなくて…」
 やっと解放されたと思ったら、教室の前でボイスとフローラが待ってくれていた。
「強引に連れ出した方が良かった?」
 ボイスの問いにフェリックスは首を振る。
「いつかは訊かれる事だし…今全部やっちゃって良かったよ」
 校舎を出ようとすると、フローラがフェリックスに日傘を差し出した。
「朝忘れて行ったでしょ。裏門に引っかけてあった」
「ああ、うん、うっかり。ありがとう」
 帰り道も、あちこちで中学の生徒達がフェリックスを見てはひそひそ話をしていた。
 ウィリアムズ国は日差しが強い。国民は皆、黒い髪に黒い瞳、浅黒い肌をしていた。
 だが、フェリックスは違う。彼は生まれつき全身型のアルビノで、真っ白な髪に血管の浮き出るような透明度の肌、そして血液の色そのものが見える瞳をしていた。
「わあ、あの人怖い。顔の造りは良いのに」
 道の脇で友人達と話していた少女が、三人が追い抜く時にそう言った。フローラが黒くて大きな瞳をフェリックスに向け、何か言おうとしたが、その前にフェリックスは彼女に微笑んで遮った。
(すぐ…じゃなくてもいつか慣れるよ)
 小学校の時だって、そうやってきたじゃないか、とフェリックスは自身を励ますしかなかった。

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