第2章:尋ね人

  • PG12
  • 965字

 妃は小さなビルの駐車場に車を停めた。二人は車を降りて、駐車場に直結しているエレベーターに乗り込む。
 エレベーターの中の案内板には「2F 真田[さなだ]妃霊能探偵事務所」とあった。
「お帰り妃。嬢ちゃんも」
 二階で降りて先程と同じ名前が貼られたドアを開けると、留守番していた妃の助手、園田花色[かしき]が二人を出迎えた。
「入学式どうだった?」
「良かったよ」「まああんなもんでしょ」
 嬢と妃が同時に答えて暫し沈黙。花色が苦笑した。
「じゃ、探してる人は見付かった?」
「姉さんの言った通りだった!」「顔だけじゃ流石に判んなかったわ」
 と、姉の言葉で嬢は重要な事を思い出す。探している人物は一人ではないのだ。
「妃の夢では二人ともあの高校に入学するんでしょ?」
「私の夢見[ゆめみ]も百発百中じゃないからねぇ」
 超能力者が警察の捜査等に協力する事が社会に浸透したのはほんの数十年前の事だ。妃は生まれつき勘の様なものが鋭く、幼少期から重要犯罪を含め様々な事件を解決へと導いてきた。その経験からか、妃は年齢以上に落ち着きがあるというか、既に悟りの境地に近い。
瀬良文隆[せらふみたか]の息子…そいつに接触出来ればお父さんの足取りが掴めるかもしれない』
 妃がそう言ったのは嬢が合格通知を受け取ったその日だった。以前の夢見で嬢が探している人物が進むであろう高校が判っており、嬢は喜び勇んでその高校を受験したのだが、奇遇な事にキーパーソンは他にも居た様だ。
「そっちもぼちぼち探すよ姉さん♥」
 瀬良文隆は考古学者である嬢達の父、真田[こう]の同僚だった人物だ。文隆自身は十年程前に好の研究グループを離れたが、数年前、好がとある遺跡の調査中に失踪する直前、こんなメールを家族に寄越していた。
『文隆が何か企んでいる様だ』
 そしてそれが最後のやり取りとなった。
「勿論よ。恋にうつつ抜かさないでね」
 父の搜索に専念する為に警察の特別捜査員を辞め、花色の祖父に資金を借りて探偵事務所を立ち上げた妃がにやけっぱなしの嬢の額を小突いた。嬢は舌を出して笑う。
「ところで、嬢ちゃんの方は顔で判ったの?」
 花色が不思議そうに訪ねた。妃が興味無さそうなフリをして自分のデスクに着く。嬢も応接用のソファーに腰を下ろした。
「顔とかじゃないんだ」
 嬢は鞄を下ろし、手を胸に当てて思い出した。
「魂で判るよ」

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