第1章:戸惑うフェリちゃん

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  • 5291字

「たっ大変だ!」
 私はジジからの情報に思わず立ち上がった。モモ以外のペット達は、数日前から連れだって里帰りをしていたのだが、予定よりも早く帰って来たと思ったらなんて事だ!
「どうしたんだハカナイドス」
 談話室で寛いでいたアオイドスが、新譜のアイデアを兄弟に語るのをやめて問う。
「フェリだ! ……じゃない、それどころじゃないんだどうしよう!」
「まず落ち着きましょうか」
 ジャスティンが立ち上がり、私の肩に手を置いて座らせる。
「で、何があったんです?」
「あ、ああ。私の家が、乗っ取られそうなんだ!」

 私の故郷であるトラモント島は、かつて星晶獣セレストの生み出した霧によって包まれ、誰も寄り付けなくなっていた。
 しかしジータやドランク達のおかげで問題を解決した後、トラモント島はガロンゾ島周辺への経由地として、再開拓が行われていた。
 それは今の所、誰も居なくなった村の周辺だけだ。私が生きていた頃に比べると、騎空艇の技術は格段に良くなった。わざわざ崖の上に騎空艇を泊めなくても、村や畑がある平地の近くに新たに港を作って、その周りが賑やかになっているだけだった。
 でも、とうとう手狭になってきたらしい。そもそも、唯一の先住民である私がこうして旅をしている今となっては、トラモント島の全ての土地が誰の所有物でもない様に見えるのは致し方なかった。
 私の実家は丘の上に建っていて、島でいちばん大きな屋敷だ。ジジ達は村を散歩している途中、その屋敷を改修し、商工会議所として利用しようと話し合っている人達を見かけ、慌てて戻って来たそうだ。
「それは穏やかじゃないな」
「ああ。ジータに旅程を変えられるか、戻って来たら聞いてみる」
 最悪、私一人でも行ってなんとかしないと。でも、一体どうやって?
「島ごとベンジャミンが買えば良いんじゃないですか?」
「ジャスティン、好きな子へのプレゼントは、自分で買うものだぞ」
「誰がこんなクソババアの事が好きですって?」
「誰がクソババアだって?」
 モモにジャスティンをお仕置きしてもらっている間に、私達は話を進める。
「金を出すのは別にやぶさかじゃないぞ。一刻を争うようなら一旦買い取ってしまうのが良いだろう」
「いや、別に島まるごとは……。それに、うちの土地は元々うちのもので、今、他の人間が所有権を持っている訳じゃない。支払うにしても、一体誰に払うんだ?」
「なるほど、正当な所有権を主張できるようにする、というのが問題解決の本質か……」
「貴女が相続した屋敷であるのは間違いないんですから、とにかく貴女が屋敷に戻るのが先決でしょう」
 モモの下からジャスティンが這い出す。
「でも、私は百年近く前の生まれなのに、この姿だぞ? 信じてもらえないさ」
 うーん、とそのまま迷宮入りしてしまう。そこに通りかかったカタリナが顔を覗かせた。
「どうしたんだ。皆して難しい顔をして」
 私は再度説明する。カタリナも隣に腰を下ろし、一緒に考え始めた。
「確かに、フェリが所有権を持つ本人だと信じてもらえたとしても、幽霊に所有権を認めるかどうかはまた別問題だしな……」
「生きている人間じゃないと、やっぱりだめか……」
 そこで、ある男の顔が思い浮かぶ。
「そうだ! ドランクに何とかしてもらおう!」
 名案だ。あいつはちゃんとあの家の血も引いているし、あの手この手を使って解決してくれるに違いない!


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