時空を越えて

  • G
  • 433字

「…此処で良いの?」
 大きな襟の付いた服を着た少女が、真っ黒な四角い箱に尋ねた。
 彼女は絢爛豪華…とは言わないまでも、細かな装飾に彩られた、美しい部屋の中に居た。棚には分厚い本が並び、ベッドには緻密な刺繍が施されている。
 暗かったが、よく見ればベッドには真っ白な髪と肌の男が寝ていた。
「…この『賢者』候補、お金持ちなの?」
 囁くように少女が尋ねる。
『この国の王婿だ』
 箱から声がした。少女は驚きもせずに、「ふーん」と言いながら物珍しげに室内を眺めている。
 彼女が満足した頃を見計らって、箱が言った。
『そろそろ』
 言われて少女は箱を男の枕元にそっと置いた。ポケットからクワガタムシの様な形の機械を取り出し、尋ねる。
「これは?」
『お前が持っておけ』
「凄いね。他の宇宙ではもうこんなのが作れるんだ」
『お前の世界でももうあと数十年もすれば作れるようになる』
 少女は元あった場所へと機械を仕舞う。男が目覚めそうな気配を見せたので、慌ててその部屋から立ち去った。
 時空を越えて。

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