第3章:死する躰

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 六振が過去へと飛び、転送装置が動きを止めてから、審神者はその扉を開けた。
「無事転送できたみたいね」
「どうかされましたか?」
「や、何でもないよ」
 前田の肩をマント越しにぽんぽんと叩きながら、転送装置に乗り込んだ。現世にて転送装置が並ぶホールを出てすぐ、高い男の声を聞く。
「ふーかぁー。風花! 呼び出されたんでしょ? 一緒に行こう」
「呼ばれている様ですが」
「ほっときなさい」
 人混みの中を前田と逸れない様に進む。
「わっ!」
「わっ!?」
 突然物陰から現れた白い姿に、前田は驚いて審神者にしがみついた。すぐに、自分は護衛だったと思い出し、真っ赤になりながら手を離して姿勢を正す。
「ははっ、風花殿は相変わらず驚いてくれないな」
 鶴丸国永だった。後ろからしつこく呼んでいた声が、立ち止まっている間に近付いて来る。
「無視しなくても良いじゃん……」
 穂村だ。鶴丸は笑いながら彼の隣へ。
「言っただろ? 追って駄目なら待ってみろって」
「うん、引き留めてくれてありがとう……」
 コウは少し走っただけで息が上がっている彼を見下ろす。
「何で私が呼び出されないといけないの。教授[ボス]は?」
「研究会で不在だって」
 今朝の急な出陣依頼は、転送装置の不具合で、本来出陣する筈だった部隊の身動きが取れなくなったからだった。そこで不具合の原因を探る為に、設計者達が呼び出されたという訳だ。
「私なんか代わりに部隊出せって言われたんだけど、何の当てつけ?」
「頼りにされてるだけでしょ? ……ああ、それで清光君じゃないんだ」
 いつもと違う近侍に彼は笑いかける。前田は礼をした。
「前田藤四郎と申します」
「僕は『エン』。よろしくね」
 穂村は審神者名を返した。四人は開発課を目指したが、途中でコウがある事に気付く。
「あー! 刀剣は連れて行けないじゃん。職員証、本名だし」
 審神者になってから、メンテナンスの為に呼び出されたのは初めてだったので失念していた。二人はそれぞれの近侍に小遣いを渡し、適当に遊んでおけと言い渡す。
「博物館に行けば知ってる奴が居ると思うよ。向こうはあんた達を知らないけど」
「お腹が減ったら食事は摂りなよ。僕達の事は気にしなくて良いから」
 刀剣達と別れ二人は開発課へ。それぞれの職員証を取り出し、電子キーを認証させて入る。コウは自分のマシンを立ち上げると、手早くログを確認した。
「どう?」
「安全装置の不具合っぽいね……」
「流石コウちゃん。特定が速い」
 刀剣男士以外の者が過って転送装置の無い場所に飛ばされないよう、安全の為の転送中止プログラムが組まれている。エラーコードはそれを示していた。
「大方、特定の出陣パターンで起こる問題[バグ]じゃない?」
「今日中に何とかなると良いね」
「阿呆。何とかなるじゃなくて、何とかするの」


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