第4章:消えたジータちゃん

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  • 5596字

「グウィンちゃんは魔法に興味あるの?」
 僕と団長さんが魔法書を見るという事で、まずは本屋に行くことになった。同行を申し出た少女に尋ねると、彼女は首を横に振る。
「あ、もちろん魔法が好きじゃないとか、そういうのじゃなくて。ママが小説好きなんです。今はグラサイに世話になってるけど、自分はいつかはパパとママの所に戻るので、お土産」
「そっか。じゃあ時間を決めて、店内では自由行動にしよう。とりあえず三十分後にレジ前集合ね」
 まだ見足りないなら、その時延長すれば良いだろう。店を出た所で、グランサイファーを出てから一時間という所か。
「団長さんに本を見繕う……って言ったのは良いけど、回復魔法はとっくに団長さんの方が極めちゃってるからなあ……」
「それなんだけど、そろそろ二つ目の専門を増やしても良いかなって。ドランクも水の他に火とかも使えるでしょ?」
「それは良い考えだね。団長さん、光以外に得意な属性ある?」
「特には……」
「じゃあ用途から決めようか。攻撃系、防御系、支援系だとどれ? 戦闘用途以外だと、日常生活や生産活動の効率向上に特化した魔法もあるけど……」
 魔法書のコーナーでニーズを聴き取る。
「支援系って、例えばどんな事するの?」
「うーん、僕も攻撃防御の特化型だからあんまり詳しくないんだけどさ。例えば主力の戦闘員が火属性だった場合、支援系魔法として風の魔法を使ってその威力を増すとか」
「なるほど」
 団長さんはそのまま腕を組んで目を瞑り、唸りながら考え込んでしまう。
「……まあ、攻撃や防御の魔法の応用と言えばそうだから、とりあえず戦闘魔法の基礎の本でも買っとく?」
「それでお願い」
 そして約束の時間。
「良い本あった?」
「これとかどうですかね?」
「あまり広く出回ってない出版社のだね。入手しづらい点で言えば、お土産には良さそうだ」
 会計をして店を出る。グウィンはどうやら、自分用にも本を買ったらしい。
「生き物の図鑑?」
「はい。見た事ない魔物も沢山載ってる」
「あ、これルナールの絵だ。魔物の章は全部そうかな」
 早く帰って読もう、と言われる前に、餌を差し出しておく。
「歩きながら読むのは危ないよ。あそこのカフェに入る? 何か奢るよ」
「ほんと!? じゃあ私、特産品のフルーツパフェ!」

「いっけない! すっかり長居しちゃった」
 空が夕暮れに染まり、本の文字が読みにくくなったところで団長さんが顔を上げた。もうそろそろ帰っても良いだろう。
 外に出れば、冷えた風に二人が震える。
「この辺だと、この時期は朝晩は冷えるねえ。早く戻ろ……」
 その時、視界の端で何かが明滅した。どこの通信符号だ?
 きっと自分達には関係無いと思いつつも、念の為歩きながら記憶を探る。この島の軍の符号ではない。暗号化されている符号ではなさそう。適当に当てはめて意味が通じる規格は――
 ――秩序の騎空団だ。送られていた内容は「ドランク」。僕を追っている? いや、流石にそれなら僕の視界に入るようなへまはしないか。では、僕を呼んでいる? 何故?
「ごめん、二人共」
 無視するのは得策とは思えなかった。かと言って飛び込むのも愚策かもしれない。ここは慎重に行こう。
「買い忘れを思い出しちゃった。先に戻っててくれる? 道はわかるよね?」
「わかった。皆にもそう伝えとくね」
 手を振って彼女達と別れる。秩序の騎空団なら、彼女達に危害は加えないだろう。
 先程の通信士が居たと思われる場所へと急ぐ。塀の上を見上げると、そこには確かに一人の騎空士が居た。


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