虚言症

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 気さくで騒がしい奴は嫌いだ。勝手にプライベートな範囲に踏み込んで、あたしの集中力を削ごうとする。
 だからあたしは清々していた。
 ……そのつもりだった。
「最近元気無いじゃんスツルム~」
「うるさい」
 頬を突いてくるドナを振り払う。ドナは意味深に笑った。
「ドランクが訪ねて来ないのがそんなに寂しい~?」
「いや、寧ろ清々しい」
「は~。私がドランクだったら、それ聞いたら泣くってば」
 知った事か。勝手にギルドに押しかけてきたと思ったら、ほとんど毎日ちょっかいをかけてきて。かと思ったら、今度はぱたりと音信不通。何なんだ一体。
「どこか遠征でもしてるんじゃないですか?」
「くたばったって噂は聞かないしねえ」
 ヴォルケの言葉に、ドナは同意する。
「あんな強い魔法使いの首を取ったなら、誰だって吹聴して回りたくなるだろうし」
「別にそんな大層な奴じゃないだろ。あたしと互角くらいだったぞ」
「うわ出た。無自覚な天才~」
「スツルム基準で話すと、ほとんど皆凡人になりますよ」
「知るか」
 気さくで騒がしい奴は嫌いだ。あたしは席を立ち、ギルドの建物を出る。
 ギルド前の道で暫く佇んでみても、聞き慣れた靴音は聞こえてこない。
『スツルム殿』
 そう突然耳元で呼びかけられる声も無い。
「……ちょっと怒鳴っただけじゃないか」
 ギリッと唇を噛み締めて、あたしは今日の仕事へと向かった。