第2章:被検体「鶴丸国永」

  • PG12
  • 6367字

 あの日から一週間。穂村が研究室に姿を現す事は無かった。いつもの様にコウが昼前に研究室に赴くと、氷室が顔を見るなり訊いてくる。
「穂村の様子、どうだ?」
「なんで私に訊くんです?」
「どうせ家に行ってたんだろ?」
 コウはぼりぼりと頭を掻く。隠し事は通用しないか。
「あの光景は穂村君じゃなくてもトラウマになるよ……ってか、医学部卒のあいつがあれじゃ……」
 実験室に響く悲鳴。転送装置からぼたぼたと滴り落ちる赤い液体。原形を失った鋼の塊。
 転送装置間及び装置外への精神の転送・再構築、これが不可能ならば、刀剣男士を過去に送り込む事はできない。今はまだ何処かの段階でエラーが生じている。それは負傷という形で刀剣男士の肉体に跳ね返った。それも、体中あちこちがばらばらに、継ぎ接ぎになる様な傷として。
「肉体は換えが利くし、精神の方も本体に戻るだけとはいえ。……原因は、傀儡に埋め込まれてる子機にもあると思います」
「どうして判るんだ?」
「転送装置間のテスト、精神無しの傀儡では失敗した事無いんですよ。恐らく、精神が結び付いて動作する子機が何か悪さしてる。子機は胎児に埋め込まないといけないし、鶴丸は成体モデルだから次の傀儡ができるまで一ヶ月かかるって」
「一ヶ月!?」
「平野なんとかって刀なら子供だから速いらしいんだけど、別の刀剣が断固拒否してるらしくて」
「マジか……あいつ、修論間に合うのかよ?」
「さあ。けど、家で何かやってたし、やる気は失ってないみたいですよ」


『創呪擦罪 骨肉相噛』がアマプラで聴ける事ご存知でした?
私は知りませんでした。