第2章:誘拐されるドランクちゃん

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  • 4100字

「うーん、やっぱり落ちてきちゃうなあ」
 ドランクは部屋で外出の準備をしていた。女体化した自分はエルーンらしく華奢で、いつも腰につけているポーチのベルトが留まってくれない。
「まあ良いか」
 そう言って宝珠の入ったそれを机に置く。よろず屋に借りているポシェットは小さく、手帖と財布を入れたらぱんぱんになってしまった。どうして女物の鞄はこう小さいのだろう。
「スツルム殿も出かけない? フェス楽しみにしてたでしょ?」
「良い」
 元々無口だが、野太い声が嫌なのかスツルムは益々言葉を発しない。
 ドランクは姿見の前で髪の毛を結う。スツルムはベッドに寝転んでその様子を見ていた。
「ねえやっぱり僕可愛くない? 凄く可愛い!」
 ドランクは何故かナルシスト度が上がっている。実際、年齢の割に幼く見えるタイプの美女に変身していた。よろず屋が用意した服のスカートも短く、童顔に拍車をかけている。
「ああ。可愛いぞ」
 スツルムに言われてちょっとときめいてしまう。感じ方や考え方まで変わってしまっているのかな。
「女のあたしよりもな」
「スツルム殿にはまた別の可愛さがあるよ~」
 できた、とポニーテールを仕上げたドランクが手を下ろす。ベッドから腕を伸ばし、スツルムがその手を握った。
「なになに? どしたの?」
「いや、捻り殺せそうだなと思って」
 手首なんか、指で輪っかを作ってもなお隙間が出来るほど細い。それを聞いたドランクは蒼い顔をして手を引っ込めた。
「冗談だ」
「今のその姿で言われると冗談に聞こえないよ~」
 ドランクはそのまま逃げる様に部屋を出ようとする。
「それじゃ、行ってきます」
「……気を付けてな」
 ドランクがにこりと笑った。
 駄目だ、可愛すぎる。あいつ、面倒な事に巻き込まれないと良いが。

「可愛い~」
 準備を整えてラカムと共に洞窟へ向かおうとしたジータは、着せ替え人形にされていたアオイドス達が戻って来た所に鉢合わせた。
「流石は俺と言ったところだろう?」
 アオイドスは白地に赤の縞模様のユカタヴィラを着こなしていた。髪は結って纏められている。ジャスティンも色違いの黒のユカタヴィラを着ていた。
「まあ、これなら男女で服の構造に殆ど違いがありませんからね」
 スカートを履かされるのかと思っていたので、正直ほっとしている。
「楽しんで来いよ、フェス」
「言われなくとも」
 ラカムの言葉に、アオイドス達は楽しそうに宿を後にした。
「私達も行こうか」
 ジータ達が宿を発とうと歩き出したところ、「お先~」と青い髪の女性が追い抜いていく。
「……ドランク、すっかりスカート履きこなしてるね」
「だな。俺は何回見てもフェリちゃんと見間違うぜ」
 ドランクは図書館で、この近辺の魔物や星晶獣の情報、最近のニュースなどを調べてくれるらしい。
「しかし、アウギュステにもう一匹星晶獣が居るなんて、俺は聞いた事ねえぞ」
「だよねえ。この辺は観光地だから魔物も少ない筈なのに」
 二人は森を洞窟目指して進む。ラカムは隣を歩く少年を見た。顔立ちや眼差しはジータだ。だが、男だ。
 なんとなく、いつもと違う気分になってしまい、自分に辟易する。
 俺は結局、ジータの「女」である部分に惹かれてたのか? それも、自分の年齢の半分くらいしか生きていない子供に欲情するとか、クソだな。
 そんなラカムの心情には気付かず、ジータはラカムの顔を見てニヤニヤする。
「なんだよ、顔に何かついてっか?」
「ううん。ちょっと背が伸びたから、ラカムの顔が見やすいと思って」
「……そうかい」
 でも、今の言葉にはときめいちまったな。それはそれで複雑な気持ちになるラカムであった。


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