Cosmos and Chaos
Eyecatch

第6章:初恋と計画

  • G
  • 1230字

(でも嫌いなもんは嫌いなのよ!)
 あの後学校に着いたブルーナは、既にフェリックスが自分の席でラジオを聞きながら勉強していた事に舌を巻いた。
「あ、ブックスさん、おはよう」
 フェリックスと口を聞くのは始業式以来初めてだ。
「おはよう。いつもこんな時間に来てるの?」
 仲良くなって味方に取り込まなければいけない。あくまでも任務で! と心に言い聞かせ、自分より能力の高い人間への拒絶反応を堪えながら親しげに尋ねてみる。
「うん。弟がアスリート目指してて朝練するから、一緒に起きて付き合ってるんだ」
「へえー」
 それでガタイが良いのか、と納得する。何の勉強をしているのかと(勉強のライバルとして)気になったので、彼の近くまで寄って覗いて見た。
「薬草学?」
 フェリックスは教科書ではなく、字の大きな特別な専門書を読んでは何事かをノートに書き留めていた。
「うん。趣味で」
「へえー」
 さっきから「へえー」しか言っていない気がするが、元々口下手なブルーナにそこから話を発展させるスキルは無かった。
「日焼け止めとか自分で作ったりしてる」
 ブルーナが続けないのでフェリックスの方が言った。なるほど、さっきから何か匂いがするなと思ったら日焼け止めの匂いか。
「日焼け止め塗るの?」
 ブルーナが尋ねるとフェリックスが驚いた顔をした。
「え、塗ってないの? それ肌に悪いよ」
「そうなの!?」
 今度はブルーナが驚く番だった。両手で顔を挟んでそれを表現する。今まで一度も日焼け止めなど塗った事が無い。色素が無いから日に焼ける事が無いのだ。
「日差しで病気になったりするらしいよ。日傘も差した方が良いと思うな」
 ブルーナは一応日傘は持っていたが、面倒なので学校に差して来る事は殆どなかった。今度からはちゃんと差して来ようと心に誓う。
「おっはよーんフェリックス君。今日も俺の事を置いてっちゃうなんて酷いじゃない…」
 か、と言って口を開けた状態で、教室に入ってきたボイスが固まった。それから素早く廊下へ出ると扉を閉める。
「ごめん、お邪魔だったね!」
 そして廊下をダッシュする音。そして何かに躓いて派手にこける音。
「気にしないで…変な奴なんだ…」
 フェリックスが笑いを必死で堪えながら言った。ブルーナの方は我慢が足りずに噴出した。フェリックスはブルーナが笑う所を初めて見たので、仏頂面じゃなくていつも笑ってれば可愛いのに、と思った。
(やばい…)
 ブルーナは笑いが治まると軽く挨拶して自分の席に戻った。
(これはやばい…)
 笑った所為ではなく、別の事が原因でブルーナの心臓は高鳴っていた。
(本気で好きになる…)
 さっき自分が笑った時にフェリックスが見せた表情が、同じ人間とは思えないくらい美しかったから。
 顔は瓜二つなのに、アレックスには出来ない表情をフェリックスは出来る。アレックスには無い眼の輝きを持っている。
(なんか良く解ってきた)
 アレックスが兄を羨ましいと言った理由、そしてティムが彼を味方につけたがる理由が。