第24章:受け入れられない

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  • 2275字

「…狙われるとすれば魔鏡、ルチル、シトリン姫…私達三人は一緒に居た方が良いわね。ローズもシトリンに間違われそうだから、後で一緒に隠れましょう」
 ルビィと共に部屋で待機していると、サージェナイトが帰って来た。
「じゃ、私とシトリン姫とルチルはお姫様の着せ替えね。兄さんの事情聴取よろしく」
 言うとパライバはサージェナイトとローズ、ルビィを残して隣の部屋へ。
「シトリン!」
「もるちゃん!」
 ゲッソリと疲れ切った様子の少女が目を丸くした。彼女が本物のモルガナイト姫か…。
「あんた何で逃げたの?」
「ジェダイドが…」
「あー、話は後々。モルガナイト姫…を着替えさせるのがさーき!」
 パライバとモルガナイトの目が合った。使用人からドレスを受け取りながら、パライバが珍しく言いにくそうに口を開く。
「…私、十六年間あなたの身代わりとして暮らしてきたの。本名はパライバ・トルマリンって言うんだけど…」
 ああ、とモルガナイト姫が頷いた。
「サージェナイトさんに聞いたわ。気にしないで、悪いのは『砂漠の薔薇』だし」
 パライバと二人でモルガナイトにドレスを着せ付けてあげる。シトリンはモルガナイトの長い髪を梳く役を買って出た。
 ボクはモルガナイトの腰のリボンを結びながらパライバの言葉を咀嚼する。本名がトルマリン…。
 ボク達の家庭教師、ショール先生と同じ名字だ。
 唐突に気が付く。サージェやパライバを見た時の既視感は、ショール先生に似ていたからだ! 王室の家庭教師の息子なら、サージェが事情通なのも頷ける。
 着替え終わってモルガナイト姫は姿見を見た。
「見た目以上に着るの大変なのね、ドレスって」
 それだけの感想を述べ、さて部屋に戻ってサージェナイトからも事情を聴こうとした時、エメラルド女王が部屋に入ってきた。
「ちょっと、適当に面倒見といてって言ったのに!」
 パライバがイライラと小声で言った。
「やっぱり居たわねモルガン…」
 エメラルド女王は初めニコニコしていたが、その視線がモルガナイト…本物の方を向くと表情が変わった。
「あなた…」
 正気を取り戻したんだろうか?
「あなた…何故モルガンのドレスを着てるの!?」
 ボク達の期待に反し、凄い形相で掴み掛かろうとしたので、パライバが慌てて彼女を抱き留める。
「おかあ…エメラルド様、落ち着いて…」
「それは私がモルガンの為に作ったのよ! 脱ぎなさい!」
「エメラルド様! 彼女が本物なの! 私が偽者なのよ!」
 パライバの言葉にエメラルド女王は泣き始めた。ボク達はどうする事も出来ない。
「本物な筈無いわ…だってモルガンは攫われたんですもの…」
 …忘れた訳ではなかったのか。ただ、現実から逃げ続けていたんだ、この人は。
「偽者でも…今はもうあなたが私の娘よ」
 それを聴いたモルガナイト姫が隣の部屋に逃げた。
「モルガナイト姫!」
 ボクとシトリン姫が追いかける。隣の部屋ではサージェが二人に事情を説明していた。
「ああルチル、モルガナイト姫、君達はすぐにでも隠れた方が良い」
「え?」
「僕達が逃げてきた事で、向こうは適合者が一人足りなくなった。適合者の条件は結局あっちは判らず仕舞いだけど、念の為」
「…木を隠すなら森だよ」
 ボクは父上の口癖を思い出した。
「ボクが適合者だって事は知られてないんでしょ? だったらボクは姫達を守る」
「…って君も姫…」
 サージェナイトが反論しようとしたら、ボクの背後の扉が開いてパライバが顔を出した。ボクに魔鏡を差し出す。
「持ってて…お義母様の事どうにかするから、あとお願い…」
 自信無さ気に言ってボクに鏡を渡すと引っ込んだ。シトリン姫が言う。
「私は適合者じゃないから、あの子の側に居ても良い?」
 やっぱりローズと一緒は気まずいんだろうな。
 シトリン姫が出て行き、ボク達は鏡を見た。淡く光るその表面に、何処かで作戦を練っているらしい、あの綺麗な目をした人の姿があった。
「…ルチルはその鏡を守ると思って」
 そう言われると頷くしかなかった。

「…何か見える?」
 ボクとローズ、モルガナイト姫は城の屋根裏に隠れていた。護衛としてルビィも居る。サージェナイトとオニキスは外だ。パライバ達はわからない。
 サージェナイトとモルガナイト姫から事情を…真実を聴いたボク達三人は、三人三様で落ち込んだ顔をしていた。ボクはルビィの問いに、虚ろに眺めていた鏡を見たまま首を横に振る。
「…サージェがお父…国王様の子供だったなんて」
 ローズがボクの心を読んだかのように、顔を膝に埋めた状態で呟いた。
「…でもローズ、結局君にしたら従兄なんだから、結婚できるじゃない」
 ボクは妹だから出来ないんだ。
 サージェを好きになっていたなんて気付かなかった。出来る事なら気付かずに、知らずにいたかった。この恋も、真実も。
 一方でモルガナイト姫の事も心配だった。ある程度覚悟はしていたみたいだけど、やっぱり母親にああ言われちゃショックだよね…。
「それっていつでも使えるわけじゃないの?」
 ボクの視線に気付いた彼女が鏡を指した。
「使い方よくわからなくって」
「私、使ってみて良い?」
 モルガナイト姫の手に渡ると、鏡はその光を増した。
「…そういえばサージェが気になる事言ってたな、姉さんがターコイズの事知ってたとかなんとか」
 歳を取らない、美しい瞳の『砂漠の薔薇』を牛耳る人物。森の奥の小国の姫だったサファイア様と、どんな接点があったのか。
「それ見てみる? うーん、念じたら見せてくれるのかな…」
 モルガナイトが鏡を回したりしながら念じていると、やがてある風景が浮かび上がった。

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