モルガナイト・ベリルの手記

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 モルガナイト・ベリルが晩年に記した手記によると、この後ルチルはオニキスとの間に三人の子供を儲ける。シャイニーガーデンは間も無くして共和国となり、レーザー・クォーツはこの国の最初で最後の国王となった。
 ローズ・クォーツはルビィ・コランダムと結婚するが子宝には恵まれず、サファイアもまた生涯独身を貫いた為、コランダム王家は途絶える事となる。
 シトリン・クォーツは王政崩壊後に独立し、普通に社会で働いた後、普通に理解ある若者と結婚し、服役を終えた両親と共に極々普通の一生を送ったらしい。
 パライバ・トルマリンは、ベリルでの政治に奔走。社会史に名を残す名士となる。ブルーレースもまた、平凡な人生を送る道へと戻った。
 サージェナイト・クォーツとモルガナイトは、「黄金比の書物」について調べる事に決めた。数年間はベリル領地内を、その後シャイニーガーデン国内、遂にはその外をも転々とし、最後にシャイニーガーデンへと戻ってこの手記をしたためた。
「へぇ」
 妙齢の女性が淡々と語るその話を聞いていた若者が、好奇心を押し隠しながら相槌を打った。
「それが貴女の家に代々伝わってた手記の?」
 大きな緑の瞳が頷く。彼女は手記の内容がデータ化されて格納されている端末を鞄に仕舞った。俯いた状態から顔を上げると、プラチナブロンドの前髪が頬にへばりつく。
「他にも資料はある」
 男はその鞄を見た。それほど大きくは無いが、それなりに重そうである。
「…貴女は何者なんだ? パピヨン……それも本当の名前?」
 警戒する男を、何の感想も抱いていない視線で一瞥する。形の良い唇が答えた。
「貴方を『人間』と呼ぶならば、私は『叛徒』だ」

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