第13章:ネタばらしとヒント

  • PG12
  • 1860字

公式のコミカライズがDMMで50%ポイント還元セールされています。
初登場ドランクが理想の最強ミステリアスお兄さんムーブしてたり。
霧の島の話までは入っています。


 俺が厨房で珈琲を口に含ませていると、帰ってきたサージェ達が同じく水分を求めてやってきた。
「どうだった?」
「街は変わり無いみたいだね。変な噂も無かったよ」
「収穫ゼロって訳か」
 サージェナイトが珈琲に口を付けながら俺を睨む。情報屋としてのプライドか。
「…パライバは好きなだけ居て良いって言ってたけど無計画に世話になる訳にもいかないし…どうする?」
 やがてサージェが言った。ルビィは横で黙って聴いている。こいつは周りの雰囲気に自分を合わせるタイプで、子供に囲まれていると本当にガキにしか見えないが、こうやって真面目な場面では大人しい。
「暫く王女達の再教育でも良いんじゃないか? そういやさっきあのチビが深刻そうな顔して王女の部屋に戻って来たぞ、書庫から」
「まあそりゃあ…びっくりするだろうねえ…」
 自分の名前が王妃様の名前と一緒じゃ、とサージェは珈琲を啜る。
「多分、ルチルの方が正妻…ルチル王妃の子供だね。どうして本人にもその事実が隠されてるのかは、なんとなく予想が付くけど」
「どういう事だ?」
 サージェは俺を青い目で見つめ、暫くしてクスクス笑い出した。
「何だよ」
「いや…オニキスが気付くまで黙っておくよ」
 そして彼は代わりにヒントとして、彼自身の話を始めた。
「考えれば妙なんだよね、レーザー王の周り。ルチル王妃と僕の母との和解はもう少しで決着がつくって所だったのに、突然父上はルチル王妃を正式な妻として迎え入れて」
「父上って…」
 此処で事情を知らないルビィが口を挟む。
「じゃあ何、サージェってレーザー王の息子なの?」
「まあね。だから『庶子』が自分以外にも居てびっくりしたよ。そんな浮気性な人だとは思わないんだけど。子供の欲目かな」
「あんまり似てないから気付かなかった」
「僕は母をそのまま男にした様な顔らしいからね」
 俺は無言で続けろと目くばせする。こうやって話を逸らしたり焦らしたりするのはサージェのいつもの癖だが、俺はあまり好きじゃない。
「まあ、オニキスは既にご存知の通り、僕の母とレーザー王は恋仲だったわけで。でも、当時の小国ブルカイト…ルチル王妃の出身だけど、ブルカイト王と先代のクォーツ王の間でレーザー王とルチル王妃の結婚は決められてて。僕が母のお腹の中に居た時にそれを知ったルチル王妃は、元々政略結婚で嫁がされそうになっていた訳だし、婚約を破棄して僕の母にクォーツ王妃の座を譲ってくれようとしたそうだ」
「だけど実際にはそうならなかった」
 ルビィの言葉にサージェが頷く。
「ブルカイト王や先代の王としては許したくなかったみたいだよ、なんせ僕の母は庶民だし。でも僕が生まれた頃には話がまとまりそうだった。なのに父上はルチル王妃を選んだ」
 サージェが怒っている様な悲しんでいる様な目をしたが、決して口調には出すまいと、代わりに膝の上の拳を強く握った。
「…もしかしたら母は事情を知っているのかもしれない。判らないけど…とにかく母は王室付きの家庭教師として王宮には置いてもらえたし、父上は生まれてきた子供の僕には『クォーツ』姓を名乗る事を許してくれた。その後母はパライバの父親と出会って結婚して、パライバは養子に出したけど時々顔を見せに帰ってくる四人家族って訳。僕だけちょっとはみ出し者」
「そんな寂しい事言うなよー」
 ルビィがサージェの肩を叩いた。サージェは苦笑して続ける。
「それで、ローズちゃんやルチルの事だね。ローズ王女とシトリン王女はそれから一年くらい後に生まれて、そして直ぐに『砂漠の薔薇』の襲撃があった。この時にシトリン王女が誘拐され、ルチル王妃とアメジスト王女、それから先代のクォーツ王が亡くなっている。公表されている情報では」
「アメジスト王女って誰だ?」
「クォーツ王の妹だよ。僕から見れば叔母」
 俺の疑問にすかさずサージェが答える。俺は空になったマグカップを皿洗いの使用人に渡し、考え込んだ。
「ルチル王妃がその時死んだとしたら、あの小僧をその後産める訳無いだろ」
「ま、そこら辺の情報が操作されてるみたいだね」
 サージェ達もカップを返し、俺達は厨房を後にする。
「死んだとされている三人の内、お葬式で遺体の顔を参列者に見せたのはクォーツ王だけらしい。他の二人は傷があるからとか何とかで見せなかったとか」
「…という事は…」
 ルビィもある可能性に思い至ったのか、ゴクリと唾を飲み込む。サージェが廊下を歩き出しながら頷いた。
「ルチル王妃かアメジスト王女のいずれか…或いはその両方が、『死んだ事にされた』のかもしれないね」

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