R15+ 6312字ただ一つの選択肢 「おっ。今朝来たってのはお前か。へし切長谷部」 「長谷部と呼べ」 薬研藤四郎は旧知に微笑みかけた。煤色の髪の付喪神は冷たく返す。その様子を見て、鶴丸国永は事情を尋ねた。 「なに、長谷部は信長さんから
PG12 6367字被検体「鶴丸国永」 「穂村君、居る?」 大学も春休みに入り、学生達は実家に帰ったり旅行に行ったりと休暇を楽しんでいた頃。特に予定を立てていなかった穂村は、研究室でテキストを読んでいた。控えめな研究室秘書の声に、立ち上が
PG12 6955字西暦二二〇三年 三月 鶴丸国永は大きな蔵の中で踊っていた。ひらり、ひらり。上機嫌で着物の袖を翻す。揺れる髪はまるで雪の様に白いが、その顔は若者の風貌だ。陽が差さぬ蔵の奥には、薄く微笑みを浮かべてその様子を見る男の姿