第20章:真実

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  • 2253字

「…という訳です」
 僕はこれまでの経緯を両親に話し終えた。父上が頷く。
「そうか…私達の説明不足の為に苦労をかけたな…」
 とりあえずベリルに居る姫達が心配なので、狙われている事を伝える手紙を伝書鳩に託し、今度は王が話し出した。
「鳩でも一日かかるから、手遅れにならなければ良いが…。さて、全て話そうかサージェナイト。君が推測する通り、ローズとシトリンは私の娘ではない。彼女達はアメジストの娘だ、私から見れば姪に当たる」
「ルチルは?」
「あれは私と王妃との子供だ。君の異母妹[いもうと]だよ」
 父上は溜め息を吐いた。
「アメジストは奔放な妹でなあ…城から脱走して街で遊んで帰って来るのは日常茶飯事だった…そういう所がローズに遺伝しているみたいだが」
 その言葉に僕は少し吹き出してしまう。
「ローズなんかはまだ可愛いもんだ…アメジストはあろう事か出先で子供を作ってきてな。まだ彼女が今の君くらいの歳の頃だ。しかも相手が『砂漠の薔薇』の一味で」
「『世間体』が良くないという事で、急遽レーザー王とルチル王妃を結婚させて、彼女が子供を産んだら二人の養子に…世間には二人の子供として育てる事に決めたのよ、先代の王が」
 後半は母が説明した。父上は母を捨てた訳じゃなかった…その事に少しホッとする。
「私も結婚前に君をショールに産ませていたこともあって断るに断れんでな」
「先代の王は私達の生活も保障してくださったし」
「なるほど…」
 僕はすっきりした気持ちで、いよいよ本題に入る。
「それから、神器を使う資格についてですが。あとルチルの事も」
「まあそう急かすな。勿論、森で会った人物に教えないだろうな」
「僕を信用されてないんですか?」
 信頼の王冠をなくした所為かと思ったが、深い意味は無かったらしい。
 父はこう僕に尋ねた。
「王冠が光るところを見た覚えはあるかい?」
「いえ…」
 ここで僕も父の言わんとする事に気付く。
「まさか…父上も神器を使えないんですか?」
「そうだ。神器は女性にしか使えん。シャイニーの力は女性にしか発現しないのだ」
「だから姫ばかりを」
 父が頷く。
「アメジストもその事は知っていたから、あいつが向こうに教えたんだろう。しかし君の指摘通りそれだけでも駄目だ」
「もう一つの条件は何ですか?」
 父は答えの代わりにヒントをくれた。あまり悠長にしていられる事態ではないのに、と少しイライラする。
「ルチレーテッドは使える。ローズとシトリンは使えない。アメジストは使える」
 暫く考えたが解らないので答えを求める。
「努力が足りないな。良いか、答えは『シャイニーの力は男親からしか遺伝しない』だ。だからサージェやオニキスに娘が出来たらその子は神器を使えるが、ルチレーテッドの子供は使えない」
クォーツ王家[うち]は世襲はずっと男の子を次の王にしていましたが、シャイニーの力が使える血筋を見失わない為だったんですね?」
「そうだ。だからオニキスとローズを結婚させたくてな」
「僕を次の王にするって案は出なかったんですか?」
「なんだなりたいのか?」
「いえ別に」
 このやりとりで少しだけ、ピリピリした空気が和らいだ。父上が声を上げて笑い、少しして事の深刻さを思い出す。
「ローズが結婚したら何もかも全て話すつもりだった。ルチルにも」
「そういえばルチル王妃はどうなさったんです? 襲撃の後も生きてらっしやったんでしょう?」
「ルチレーテッドを産む時に亡くなったよ。酷い難産でな。国民には、ルチレーテッドが生まれた日に事故で死んだと公表したが、その前に襲撃で死んだと城の者に公表したのは、ローズ達の所為でルチレーテッドの懐妊を公表出来なかったし、またルチレーテッドが次に狙われる可能性があったから隠したかったし、それから折を見て逃がしてやりたかったのだよ」
 一気に言って一息入れ、また続ける。
「ルチルは元々好きで私と一緒になった訳ではないし、王妃が死んだ事にすれば、ルチルは田舎に引っ込んで好きな暮らしが出来るかと思って」
「…そう…ですか…」
「念には念を入れてな。木を隠すなら森ではないが、敢えてルチレーテッドは人目に付きやすい立場に据えた。小さい頃から姫をお守りするのが庶子のお前の役目だの、護衛だから女の子らしい恰好はやめろだの煩く教育して…。それでも彼女に自由な暮らしをさせるには、王女である事を隠さなければならなかった。不運にもルチレーテッドもローズも私の母に良く似て、並ぶときょうだいに見えた。私の血を引いている事を隠せないなら、男の子の振りをさせるしかなかったのだよ」
 ルチルに貴重な少女時代を捨てさせなければならなかった父上の心の痛みが伝わってくる程だった。
「ルチルならきっと、父上の気持ちを解ってくれますよ」
 そして話はアメジストの件に移った。
「アメジストは襲撃に荷担しシトリンを盗賊に売ったとして死刑判決を下されたが、王族だからと無期懲役に減刑された。それでも私はその事を国民に公表出来んで…あいつも死んだ事にした。これでは私の父上とやっている事が同じだとは思いつつもな。アメジストも適合者だから、砂漠の薔薇の手に渡れば良くないし」
 父上はソファから立ち上がり、その向こう側へ歩いて背を向けた。話はこれで終わりか。
「…ベリルに戻ります」
 僕が言うと背を向けたまま頷いた。
「『森』を抜けて行きますので隊員は置いて行きます。途中コランダムに寄って、あとはベリルの兵士達でどうにかなるでしょう。父上は城の中にスパイが残っていないか、調べておいてください」

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